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鳩の森には帰りたい。
■こんなときどうしたらいい?~対処法のススメさま。うっかりチャンプになってしまった時の対処法にトラックバック。

お題。
現代の医療では治せない病気(不治の病)にかかっております。どんな病気?


*


 ある日、N氏の右腕に小さな羽毛が生えてきた。
「はて?なんだこの羽毛は、何か鳥でも触ったかな?」
と、少々疑問に思ったN氏であったが、その日はその羽毛を抜くだけであまり気にせずにもいた。
 だが、翌日。
また、羽毛が生えてきた。しかも、今度は三カ所。
「なんだ?なんだ?これは?」
ぶちぶちぶちと三カ所の羽毛を抜きながらも、N氏はその日もあまり気にせずにいた。
 だが、翌日。
また、羽毛が生えてきた。しかも、今度は十カ所。
「なんだ?なんだ?なんだ?なんだ?」
いや、さすがに、これはただ事ではないかもしれないと思い、N氏は近所の大学病院に向かった。

 近所の大学病院の待合室はとても混んでいた。
そして、何か、隣接する病棟の方がとても騒がしかった。
 待合室には、同じ様に羽毛を生やした人達が何人か診察を待っていた。
「あら、あなたもですか?」
N氏は、隣に座った男に声をかけた。
「ええ、昨日から何故か羽毛が生えだしまして」
「私もなんですよ」
「いったいどうしたのですかね?」
「まさか新種の伝染病とか?」
「ああ、いやあ、そんな事ならテレビとかでも大々的にやってるはずですから」
「まさかねえ」
「ええ、まさかねぇ」

 N氏が、医者に、腕から羽毛が生えてきた事を説明すると。
医者は、またかと言った顔をして、N氏にこう告げた。
「ええと、これは、突発性鳩変異症候群という伝染病です」
「はっ?突発性鳩変異症候群。何ですかその病気は?」
聞いた事もない病名に、N氏が医者に問いかけると、医者は伏せ目がちにこう言った。
「ええと、要するに、鳩に突然変異しちゃう病気です。通称、鳩ぽっぽ病」
「はっ?鳩ぽっぽ病……」
「はい、一年前から突然流行り始めました。発症から約半年で完全に鳩に変異します」
「えっ。そんな話はテレビとかでも全くやってなかったですが」
「ええ、国家機密で、報道管制がひかれています」
「はっはっはっはっはっはっはっはっ??」

 N氏は驚愕した。
まさか、全く自分の知らない所でそんな伝染病が流行っているなんて。

 「えええと、な、なななんあにっ。ち、ち、治療は出来るのかねっ?」
「残念ながら、現代の医療技術では治す事の出来ない病気です」
「ええええええええぇぅ」
「つまり、不治の病と言う事です」
「不治の病……」
「そう、不治の病です……」


(・Θ・)ぽっぽー



 突然の不治の病。突発性鳩変異症候群(通称、鳩ぽっぽ病)にかかってしまったN氏。
当然その事実にN氏は落ち込んだ。
そしてその気持ちは、鳩に対する憎しみへと変わっていった。
「鳩……。鳩……。何で、鳩になってしまうのだ。鳩なんか、鳩なんか嫌いだ」
そう呟きながら、近所の鳩の森神社出向い、鳩に豆鉄砲食らわせては、
鳩ををいぢめる日々が続いたのであった。


(・Θ・)ぽっぽー



 そんな、ある日。
いつもの様にN氏が、鳩の森神社で鳩をいぢめていると。
「おや、あなたもですか」と、後ろから声を掛けられた。
その声にN氏が振り向くと、そこには、身体の三分の一が羽毛の覆われた初老の紳士が立っていた。
「あなたも、鳩ぽっぽ病ですかな」
初老の紳士はそう言いながら、N氏に近づいてきた。
「ええ、おっしゃるとおり鳩ぽっぽ病です。そう言うあなたも」
N氏がそう答えると、笑いながら初老の紳士は続けた。
「ええ、如何にも鳩ぽっぽ病です。でも、何故鳩をいぢめていらっしゃるのかな?」
「え、何故って、鳩が憎くはないのですか?」
そのN氏の質問に笑いながらまた初老の紳士は続けた。
「ああ、確かに最初は、鳩を憎みました。でも、憎んでも仕方が無い事ではないですか」
「仕方ないですか」
「そう、どのみち、鳩になってしまうのです。であれば鳩を愛せよです」
「そそうですか」
「それより、私は、鳩になった後の事を考える様にしました」
「鳩になった後の事」
「そう、鳩になって大空を自由に飛べたら楽しいだろうなとか」
「ええ、それは楽しいかも知れませんが、所詮、鳩ですよ。鳩」
N氏がそう答えると、更に笑いながら紳士は続けた。
「それを言うなら、所詮、人間ですよ。人間」
N氏の頭の中に何か一瞬光が弾けたようなそんな感覚が広がった。
「所詮、人間ですか。人間……」
「そう、人間が一番偉いと思っておられるかもしれないが、所詮、人間は人間ですよ」
「はあ……」
「まあ、鳩をいぢめる暇があったら、これからの人生、いや、鳩生を見つめることですよ」
そう言いながら、初老の紳士は笑いながら去って行った。
「鳩生……。て言うか、どんな生き方なんだ……」


(・Θ・)ぽっぽー



 それから三日後。
N氏が注文していたある装置が出来上がったと言う知らせが入った。
その装置とは、最新の科学技術を駆使して作り上げられたコールドスリープ装置であった。
N氏は、けっこうな金持ちであり、医療技術がこの不治の病、鳩ぽっぽ病を治せるまで発展した未来まで冷凍冬眠をする計画を立てていたのであった。

 「出来たわねぇ、あなた。これで私たち助かるわね」
N氏の妻が目を輝かせてそう言った。
当然、N氏の妻も鳩ぽっぽ病にかかっていたのだ。
N氏は妻の分と自分の分のコールドスリープ装置を作らせたのであった。
「これで、五百年ぐらい冷凍冬眠につけば、きっと鳩ぽっぽ病を治せる医療は確立しているわ」
「そうだね。そうだといいね」
「なに、あなた浮かない顔をして」
N氏の妻は、首から生えた羽毛をぶちぶち抜きながらそう言った。
「いや、なに、何か、これで良いのかな?と思って」
「な、なに、何、言ってるの、これで良いじゃないの。これで、鳩ぽっぽ病が治るかもしれないのよ」
「いや、まあ、確かに、そうなのかもしれないし、そうでないかもしれない」

 N氏は、三日前にあった初老の紳士の言葉が引っかかっていたのだ。
「所詮、人間ですよ。人間。かあ……」
「あなた、何わけの判らな事言っているの」
「ああ……」
「じゃあ、さっそく私は、コールドスリープに入らせてもらいます」
「もう、行くのか」
「あたりまえぢゃないの、時間が経てばますます、鳩ぽっぽ病が進行するのよ」
「ああ……」
「ぢゃあ、五百年後に合いましょう」
そう言うと、N氏の妻は、そそくさとコールドスリープ装置に入っていった。

 「五百年後か……」
N氏は、そう呟くと、コールドスリープ装置に片足を踏み入れた。
だが、N氏の動きはそこで止まった。
「五百年後の未来に医療技術が進歩していたとしても、鳩ぽっぽ病を治せるかどうかなんて判らない……」
N氏の頭の中に、あの、初老の紳士の言葉が渦巻いた。
「所詮、人間ですよ。人間。所詮……。所詮……。所詮……。所詮……。所詮……。」

 「どうするんですかあ?」
なかなか、コールドスリープ装置に入らない、N氏にいらだったコールドスリープ管理官が声をかけてきた。
「あ、すまん。やっぱ、止めとくよ」
「えっ。止めるんですか」
「ああ」
「ぢゃ、どうするのですか?このコールドスリープ装置は?」
「君にやるよ」
「ええええ」
そう言って、N氏は、コールドスリープ装置から片足を引き抜き下に降りた。
「ホントにもらっちゃっていいのですか?」
N氏と同じ様に、鳩ぽっぽ病にかかりながらもコールドスリープ装置を作るような金のない、管理官は目を輝かせて聞き返してきた。
「ああ、君やるよ」
「ホントですね。ホントですね。有り難う御座います」
そう言って、管理官は目を輝かせて、そそくさとN氏の物だったコールドスリープ装置に入り込んだ。
「今更、ダメだとか言わせませんからね」
もう、このコールドスリープ装置は自分の物だと言わんばかりの勢で、管理官はそう言った。
「ああ、言わないよ」
N氏が、そう言い終わるも待たずに、管理官はコールドスリープ装置の蓋を自ら閉じ、コールドスリープ状態に入っていった。

 「五百年後が明るい未来である事を……」
N氏は、そう呟き、コールドスリープ装置の中の安らかな妻の寝顔を見ながらその場を後にした。


(・Θ・)ぽっぽー



 五ヶ月後。
N氏は、遂に最終変異の状態を迎えていた。
N氏の身体は羽毛に覆われ、腕には立派な羽根が生え揃っていた。
身体は小振りになり、もう殆ど鳩の体型に近く、その腕に生えた羽根を動かす為の筋肉も発達していた。

「たぶん明日の朝だ。明日の朝、完全に鳩へと変異するだろう」

 コールドスリープ装置による五百年後の治療を諦めたN氏であったが、何故かその気持ちは朗らかであった。
人間である事の意味、鳩である事に意味。そして、人間が出来なかった大空を飛ぶ事の意味。
鳩の森神社で出会った初老の紳士の言葉。そんな事を考えながら、N氏は過ごしていたのだった。


(・Θ・)ぽっぽー



 そして、遂にその時がきた。
朝起きると、N氏は完全に鳩に変異していた。
「くるっくーーー」
今まで、重力に縛り付けられていた、人間としての重みは全く感じられなかった。
「これが、鳩という者か」
N氏は、完全に変異した鳩の身体を感じながら、力強くその立派な羽根を動かして空へと羽ばたいた。

 「くるっくーーー」
 そこには、また多くの鳩たちが自由に空を羽ばたいていた。
もともとの鳩もいるのかもしれない、そして、鳩ぽっぽ病から鳩になった人間たちもいるのかもしれない。
「くるっく−ーー」
N氏は、大声でそう叫んだ。
「くるっく−ーー」
「くるっく−ーー」
「くるっく−ーー」
「くるっく−ーー」
「くるっく−ーー」
「くるっく−ーー」
「くるっく−ーー」
「くるっく−ーー」
「くるっく−ーー」
「くるっく−ーー」
「くるっく−ーー」
「くるっく−ーー」
多くの鳩たちがそう答えてくれた。

 「この地球は、いずれ鳩の星になるのだろうか?」
「もし、そうなると、五百年後に目覚めた妻はどう思うのだろうか?」
「でも、きっと平和な星なのだうかな」
「それとも、鳩ぽっぽ病を治せる医療が確立して、人間の星のままなのだろうか?」
「今は、なんとも、判らないか……」

 N氏は、そう思い、何故かある歌を口ずさみながら、力強く羽根を動かして大空へと昇っていた。


 
(・Θ・)ぽっぽー



ぽっぽぽぽぽぽぽっぽーーー♪
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(・Θ・)ぽっぽー



ぽっぽーー♪

ぽっぽぽぽぽぽぽっぽーーー♪
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ぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽーーーぽっぽ♪


ぽっぽっ♪







終わり。


*


■□■□■□■□■□【トラバでボケましょうテンプレ】■□■□■□■□■□
【ルール】
参加:
 お題の記事に対してトラバしてボケて下さい。
 締切りは1つのお題に対し30トラバつく、もしくは17日の23:59まで
 1つのお題に対しては1IDにつき1トラバ(1ネタ)とします。
 お題が変われば何度でも参加OKです。

チャンプ:
 お題を出した人が独断で審査しチャンプ(大賞)を決めます。
 チャンプになったら王様です。以下の特典と栄誉が行使できます。
  1.お題を出す
  2.言いたい放題な審査をする
  3.次のチャンプを決める
 何か困ったことがありましたら開催事務局までどうぞ。

企画終了条件:
 みんなが飽きるまで、もしくは開催事務局が終了宣言を告知した時です。

参加条件
 特になし!
 ※ 以下あれば尚可!!
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 企画元     毎日が送りバント http://earll73.exblog.jp/
 開催事務局  ボケトラの穴     http://trana88.exblog.jp/
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by katuo0076 | 2008-10-13 11:25 | トラバでボケましょう
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