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悼 笹井宏之さん。
 ネット短歌界の中からまさに彗星のように現れた天才歌人笹井宏之さんの突然の悲報にとてもとても驚いています。病気療養中であることは知っていましたが、まさか、そんな、事があるとは思ってもいませんでした。ネット的活動である、かんたん短歌blog、笹短歌ドットコム、を元として何かしらネット的に繋がっていた者として、ささいさんの活躍はとてもとても期待していた所でもあったのです。悲しいです、とても悲しいです。わたしのつくる歌は、ほんと、ささいさんの歌にとてもとても影響されていたと言ってもいいと思います。ささいさんのようなとても素敵な比喩、やさしさ、そんなものを自分のモノとして形にしたいと思っていました。憧れでもあり、目標でもあり、何かしら同様な場所で歌を始めた仲間のようでもあり。残念です、とても残念です。40過ぎてなんの身体的不都合もないような者がここにいるのに、なんで、なんで、20代半ばで死んでしまわなければならなのでしょうか。あまりの天の無慈悲にとてつもない怒りすら感じることでもあります。もっともっと、素敵な短歌をつくってみせていただきかった。悲しいです、やっぱり、とても悲しいです。



数えてゆけば会えます

「はなびら」と点字をなぞる ああ、これは桜の可能性が大きい

真水から引き上げる手がしっかりと私を掴みまた離すのだ

まばたきの終え方を忘れてしまった 鳥に静かに満ちてゆく潮

拾ったら手紙のようで開いたらあなたのようでもう見れません

あまがえる進化史上でお前らと別れた朝の雨が降ってる

熱水にひたす手のひら 中指の辺りで泳ぐきんいろのえら

星が甘いのを知っている私たちの頭上で出産しはじめる獅子

鶏のこどもを連れて冬空か夏空に軽く会釈をしたい

ひなたにはあなたをおいてぶらんこの鎖をひとつ残らずとばす

上空のコンビニエンスストアから木の葉のように降ってくる遺書

「かごのなかのサイレン鳴ってください 注射とかしますよ あの、サイレン?」

春の子は恋もシアン化カリウムの漏えい措置もたぶん知らない

隣ではベートーベンに似た人が五の段からを暗記している

「足元はやっぱり道で、どこかへと通じている道で、どこですかここ?」

あやとりの東京タワーてっぺんをくちびるたちが離しはじめる

栄光の元禄箸を命とか未来のために割りましょう、いま

  いま

家を描く水彩画家に囲まれて私は家になってゆきます

滝までの獣の道を走り抜けあの子は歌手になるのでしょうね

しまうまが右の涙腺通過して青信号に眠ってしまう

集めてはしかたないねとつぶやいて燃やす林間学校だより

とてもよくしてくれたミシンかかえてもう少しあなたを待ってみる

この森で軍手を売って暮らしたい まちがえて図書館を建てたい

心地よいほうのからだを上下させ夜の肩甲骨の彫刻

水田を歩む クリアファイルから散った真冬の譜面を追って

レシートの端っこかじる音だけでオーケストラを作る計画

横たわるワイングラスにあんこうの頭がひかる古いお話

「深いから その、深いからこちら側へ来てください つきのわぐま」

数分後関東平野の薔薇を持ちあなたは遠くとおくへ帰る

それは世界中のデッキチェアがたたまれてしまうほどのあかるさでした

鞄からこぼれては咲いてゆくものに枯れないおまじないを今日も



 すてきです、すてきすぎます。
一度もお会いしたことはないのに、まるで隣に座っていて話してるかのように、あなたの気持ちがずんずん伝わってくるような歌に限りないあなたの愛が感じられました。
そして、もっと、すてきな歌が詠えたと思います。
やはり、とても、とても、残念でなりません。
まだまだあなたの世界は広がるべきだったのだと思ってなりません。
あなたが、望むことを何故に天は叶えなかったのでしょうか。
それが、それが、とても、とても、残念でしかありません。


 でも、これからも、空で、空で、歌い続けて下さい。
少しでもそんな声が聞こえるように努力したいと思います。


 ささいさん。

すてきな歌をどうもありがとう。

そして、

いつまでも、空で歌つくり続け下さい。

ころろからご冥福をおいのり致します。
by katuo0076 | 2009-01-25 21:56
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