911なおでんな日。
 「あっ、おでん。もうそんな季節……」
立ち寄った、いつものコンビニのカウンターにおでんが出ていた。
「そう言えば、あれから4年……」

 アナタはとてもおでんが好きだった。
「冬の寒さを凌ぐのはおでんが一番さ」
そう言っては、自分で3日かけておでんを作っていたものだった。
「やはり、ダイコンは手間隙かけて仕上げてあげないと美味しくならないんだ」
と言っては、イロイロと美味しいつくり方の講釈をしてくれたものだった。
まあ、アタシは食べるのが専門だったから、そんな言葉は「はい、はい、そう、そう」と聞き流していたものだった。

 「ああ、もっとよく聞いておくべきだったかな」
今更、そう思っても遅いか、それに、もう4年も経ってしまったのだし……。

 「いや~今度アメリカに出張する事になったんだ」
初めての海外出張。場所は、アメリカといえば、当然ニューヨーク。
 「そう、それは良かったわね。お土産は自由の女神の絵葉書でいいわ」
「そんなもんでいいのか?もっと、いい物買ってくるよ。だから、餞別」
「それじゃ、結局、自分で自分のお土産代出しているようなものじゃない」
「そんな事はないよ。それ以上の物を買ってくるって」
 出発前にそんな言葉を交わした事が蘇ってきた。
「ほんの、2週間さ。その頃には残暑もなくて涼しくなってるかな?となるとおでんの季節かな?帰ってきたらまたおでん作ろうかな」
そう言い残して旅立ったアナタ。

 でも……。
テレビの中で繰り広げられた光景は信じられないものだった。
まるで、映画か何かを見ているような……。
実感の無い映像の様に思えた。
 ただ一つだけ事実としてわかる事は、あのビル……。
あのビルには、アナタの勤める会社のアメリカ支部が入っていたはず…・・・。
 目の前が真っ暗になった。
何かの間違いであってほしかった。
そうであるべきであると自分に言い聞かせた。
本当に勝手な事ではあるが、ただ一人だけ無事であるはずだと思った。

 「あれから、4年か……」
時と共に感情は薄れ、気持ちは穏やかになっていくものなんだろうか。
あの時の気持ちを全て思い出すことは難しくなってきた。
まあ、それがいい事なのか、悪い事なのか?
今の、アタシに判断する事はまだできない……。

 「おでん下さい。ダイコンとちくわと昆布とタマゴとつくね」
アタシは、無意識のうちにおでんを買っていた。

 家に帰って、おでんを食べてみた。

 でも、まだ、やっぱり、時期が早いのかな?
おでんは薄味で……。
「もっと味がしみてなきゃあ……」
と、思わないでもなかった。
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by katuo0076 | 2005-09-11 22:33
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