多をもって正とするシステムのなかに白い鰐のように紛れ込む
かくじつに晴れうたう声の輪唱に怯えひろげる折りたたみ傘
いくばくの調子っぱずれを受容するぼくたちのピアノ調律師
どれくらい歌をわすれたカナリヤの生存数をかくにんすれば
はれおとこといわれるひとの手をひいて太平洋をわたる船へ
現実をきりきざむことに甘んじる冬の理髪師の娘のゆびさき
どれくらい生きてゆけばと尋ねる老人がほんの少しと答える
にちようのごごのわたしの目の前にゆるゆるとある仮想現実
あなんかそれ違和感と思いながら白い食卓の隅ていねいに拭く
ふれるものすべてが種子となるようにその指先にあつまれひかり